流人
佐々宝砂

地球上に私の居場所はない
でも居場所くらい自分でつくれると思った
でかい大陸は無理だったが
ちいさな島をつくるのはそんなに難しくなかった

島をつくったとたん流人たちがやってきた
できたての島は栄養不足だから
みんなで排泄物をまく
それはそれで臭いながらも栄養豊かなので
すてきに作物が 米が麦がトウモロコシが稔る
たまに私の腕から生えてきて稔ってしまったりもするが
食ってしまえばいいだけだから
そう不快ではない
だけど私の居場所はまたなくなる
だってここはもう
私の土地ではなくてあのひとたちの

それで私はまたでかける
私のなかにはもう排泄物すらないので
(いやほんとはあるのだけどそれはもう私のものではないので)
材料乏しいまま海砂利こねて島をつくる
するとまた流人たちがやってくる
にこにこ笑いながら
すこうし恥じらいながら
あるいは泣きながら
それからよくありがちなことには怒りながら
力いっぱい垂れ流す
すると島は豊穣になり
豊かな作物を 米を麦をトウモロコシを稔らせ

それで私はまたでかける
またもしつこく島をつくる
殴っても蹴っても殺しても
流人たちは新たにやってきて
かれらにすべてぶんどられて
それでも支配してるのは私で


自由詩 流人 Copyright 佐々宝砂 2006-03-15 02:39:24
notebook Home 戻る  過去 未来