歩き食い
クリ

ソフトクリームやクレープなんかは、歩き食いをしてもいいことになっている。
いや、法律とか条例があるわけではなく、ほとんどの人が文句を言われない、はず。煙草は注意されるけれど。
キャンディーとかガムは全然オッケーだし、缶飲料なんかの「歩き飲み」さえも、今は誰にも咎められない。

かなり以前のことだけれど、僕がデート中にバナナを食べようとして、当時の彼女に目茶苦茶怒られた。
僕にはどうして怒るのか、まったく理解できなかった。だって、

あなたは、歩きながらリンゴをかじったことがあるではないか。
それから、縁日でイカ焼きを食べたではないか。渋谷でケバブをほお張ったではないか。
小田急線でカロリーメートに齧りついたではないか。
それが、なぜ僕が、中目黒ごとき町で、歩きながらバナナを食おうとした、ただそれだけで、あなたは烈火のごとく怒りまくるのですか?

そりゃあ、どうしても「歩き食い」が似合わない、あるいは世間体が許さない食べ物はある。
たとえば、ケーキ類。いくら原宿とはいえ、歩きながらレアチーズケーキとか季節のベリー・タルトを食べるのはおかしい。
あと、「歩き西瓜」とか「歩きドリアン」なんかも、よく分かる。
ましてや「歩き秋刀魚」とか「歩きジンギスカン鍋」、「歩きしゃぶしゃぶ」なんかは言語道断、というかまず食べにくい。
「歩き流しそうめん」にいたっては、もはや大道芸人の世界だ。
…それはよく分かる。しかし何故歩きバナナがいけない?
黄色という色合いか、皮か、逆さまから読んでもバナナだからか、違うか、意味分からないし。
それとも、もし皮で滑って転んだら危険この上ないからか。断じて言おう、「いまだかつてバナナの皮で転んだ者は、ただの一人も存在しない」
ひょっとして、このバナナがフィリピンバナナだからか? 台湾かエクアドルならいいのか? そりゃあ偏見/差別だ。

僕はまだ今でも、憤懣やる方ない気持ちに落ちることがある。

 何故、歩きながら、バナナを食べては、いけないのか
 ちゃんと論理的に、説明してくれ!

                                        Kuri, Kipple : 2002.12.23


散文(批評随筆小説等) 歩き食い Copyright クリ 2004-02-04 02:21:50
notebook Home 戻る  過去 未来