ストリッパー
ベンジャミン

夜のネオンきらびやかな街の一画
あまりはやってなさそうなその店の
客引のにいちゃんに騙されたふりをした

「うちは見せるだけじゃないからさ」って

一番前に座って待った
クリスタルライトに七色のプリズム
ピンクのランジェリーに同じ色の肌
彼女は
音楽に合わせて脱いでゆく
まとうものすべてを

一番前に座って待った
さっきのにいちゃんが指を三本
目の前に並べてみせる
うなずいて
薄暗い個室に連れて行かれた

さっきと同じランジェリー
さっきと違う表情で
彼女は
薄く透けそうな布を脱いでゆく

「あ…あのぉ、それ以上脱がなくていい。俺、ただ寂しかったから来ただけなの。あ…お金なら、ちゃんと払うし俺。だから、それ以上脱がなくていい。」

彼女は
ランジェリーと同じ色の肌を
さらに見せるように脱いでゆく

「あたしね、名前が三つあるの。みか、さなえ、きりこ。覚えてくれなくていいけど。いつの間にか増えちゃって。ちょっと困ってる。」

彼女は
クリスタルライトのプリズムに似た
不思議な色の目をしてた
見てた
見ようとしていた

「あ…あのぉ。俺、良くわかんなくて。こういうとこ初めてってわけじゃないけど俺。良くわかんなくて、でも、名前とかあんまり気にしたことないよぉ。」

彼女は
夜のネオンきらびやかな街よりも
確かにきれいだった

「あたしね、三つ名前があるのね。みき、さゆり、きみえ。覚えてくれなくていいけど。そういうのって、あたしも必要ないと思うから。だって今日だけの事だしね。」

彼女は
透けそうな布をもう脱いでいて
やっぱりとてもきれいだった

「あ…あのぉ。さっきと名前違ってるよ。あ…俺、気にはしてないんだけど、今は気づいたからぁ。」

(みか)
(さなえ)
(きりこ)
(みき)
(さゆり)
(きみえ)

「あ…あのぉ。もしかしたら。君ぃ、みさきって言うんじゃないのぉ。よくあるじゃないぃ。頭文字ひろってくって」

(みか)
(さなえ)
(きりこ)
(みき)
(さゆり)
(きみえ)

「お客さん、ごめんなさいね。もう時間みたいだから、あたし行くね。あたし、何もお客さんの役にたてなかったけど…」

彼女は
裸のまま部屋を出て
僕はいつの間にか店を出て





(あ…あのぉ)








(俺、あんまり良くわからないけどぉ)












ありがとうって、言いたかったよ










俺…






自由詩 ストリッパー Copyright ベンジャミン 2006-03-05 03:24:25
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