凍気球
木立 悟
支柱にくくりつけられたブランコが
凍りついた蜘蛛のように空を見ている
荒れた鴉の羽の朝
外灯に雪は群がり
連なる柱を傾けている
曇のなかの雫の陽
道を分ける蒸気の壁
ふたつの光をすぎてゆく影
ふわりと駆ける長い尾の影
雨が来て
小さな石の階段を沈める
枯葉が雪から離れては
水のなかへ向かう足跡のように
階段の上をつづいてゆく
雪だるまの背中
ひとつの目
まぶたの無いその黒い目は
作られたばかりの菓子が
棚に並べられていくのを見つめている
雨のなか じっと見つめている
鴉が去り 雨が去り
道には大きな影が往き交う
水の退いた階段に
雪の足跡が重なってゆく
雪は雨の行方を知らない
雨は雨の行方を知らない