凍気球
木立 悟



支柱にくくりつけられたブランコが
凍りついた蜘蛛のように空を見ている
荒れた鴉の羽の朝


外灯に雪は群がり
連なる柱を傾けている
曇のなかの雫の陽
道を分ける蒸気の壁
ふたつの光をすぎてゆく影
ふわりと駆ける長い尾の影


雨が来て
小さな石の階段を沈める
枯葉が雪から離れては
水のなかへ向かう足跡のように
階段の上をつづいてゆく


雪だるまの背中
ひとつの目
まぶたの無いその黒い目は
作られたばかりの菓子が
棚に並べられていくのを見つめている
雨のなか じっと見つめている


鴉が去り 雨が去り
道には大きな影が往き交う
水の退いた階段に
雪の足跡が重なってゆく
雪は雨の行方を知らない
雨は雨の行方を知らない




自由詩 凍気球 Copyright 木立 悟 2004-02-03 23:33:57
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