魔王と出逢った(箱庭に在る恋)
イズミナツキ

どうやら魔王は
縁側が気に入ったらしい
老人みたいにお茶を啜り
箱庭を眺めて溜息を落としている

その光景は絵になりそうで
私はそんな絵の中に入り込んで
魔王の隣に座った
魔王の銀髪はとても綺麗だ

「よく手入れされている箱庭だ」

そんな感想を漏らしてお茶を一口
魔王が何を言いたいのか
私にはわからなかった
魔王は勝手に教えてくれた

「愛に箱庭に収まらない」

私に言ったのではない
ただ呟いただけだった

「己を箱庭に収めていてはいけない」

好きな人に想いを告げられない私
そんな私を励ましてくれているのか
ただ自分を励ましているのかはわからない
でも私は前者だと思いこんだ

「さて、一緒にテレビを見よう」

魔王に誘われたのは初めてだった
ちょっと嬉しくなった私は
差し伸べられた手を取って
ドキュメンタリー番組に涙した


自由詩 魔王と出逢った(箱庭に在る恋) Copyright イズミナツキ 2006-02-28 21:17:44
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魔王と出逢った