自転車泥棒
KazMi

高架下のトンネルで
埃かぶってた
このまま処分を待つんだなって時に
無理矢理 目を覚まされた
そいつは鍵を乱暴にぶっ壊したんだ

そして助走つけて 
まだ暗い街に走り出した
風のように

おい、待てよ一体誰だ
彼女は一言ぽつりと言った
「自転車泥棒、、、。」

彼女は必死でペダルをこいで 
息切らしながら泣いていた
対向車線を流れるヘッドライトが頬を照らすたび
光る雫が流れるのが見えた

彼女と俺は 
黒い車道を一気に駆け抜けた
彼女は泣きながら 
ペダル踏み込んでいたよ
朝焼けが空に広がると同時に目の前に海が広がって
俺達は砂浜に突っ込んで転倒し 
やっと走るのをやめた

怪我してまた泣いてやしないかと思ったら
彼女 
砂浜に背けになって笑っていたよ
息絶え絶えに 笑っていたよ

俺はチェーンが切れてしまって
とうとうもう走れないようだが
これが俺の終わりなら
悪くないと思った

潮風に吹かれてゆっくり
錆付いていこう

いつか風化して
俺が本当に風になった時

彼女がまた泣いていたなら
俺はその小さな涙を攫いに行ってやろう

一陣の風になって



自由詩 自転車泥棒 Copyright KazMi 2006-02-10 08:18:21
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