競馬新聞の男
仲本いすら

こんなこと書いていいのかどうか、正直今も苦悩しているのですが
でも、書くことにしますです。


この間、錦糸町に「オリバー・ツイスト」見に行ったんです。(内容については伏せます)
その時にですね、駅前でラテン系バンドがライブをやっておったのですよ。
なんだか、いいなあってしばらく足をとめて聞いてたんですね、自分。
こう、ダンダンと周りも乗ってきて、20分くらいかな、盛り上がりつつの演奏を聴いてて

でも、なんていうのかな、自分の周辺はそのラテンミュージックに聞き入って
うっとりしてたり、彼氏といちゃついてたり、のりのりしてたり
そんなんばっかだったんだけど、ある一組の親子(と思われる)だけ、雰囲気が違った。

こう言っちゃうと、どこかから反感を買ってしまうだろうか。
ダウン症の(顔を見て、理解した)20〜30代の男性と、その手をひく60代の男性。
たぶん、親子なんだと思う。

息子のほうは、鼻水とよだれがひどくって、鼻先も赤くなってた。多分、風邪を引いてたんだと思う。
服は、よれよれのボーダーシャツ。たしか、青と白。
父親のほうは、手に競馬新聞持ってて、ラジオにイヤホン、服は・・・なんといったらいいのだろう
こう、よく競馬場にいそうな人が着ているジャンバー。
メガネをかけていたのだが、そのメガネがまた・・・。
片方のレンズがないのだ。

その光景から、自分は色々なことを想像しては
なぜか憤りを感じたり、悲しくなったりして、もうラテンミュージックどころじゃなくなってた。

「で、それを書いておまえはどうしたいんだ?」とか、言われてしまうかもしれないのだけれど。

なんていえばいいのか、正直わからない。
ただ、この事を伝えたかった、それだけなのだ。

でも、ただ一ついえるのは
あの場、あの二人は世界から孤立していたってこと。
今も、あのゴミの多い錦糸町の駅前で、競馬新聞を広げ
むすこの手をとり、楽天地へと向かっているのかな、と思うと
とにかく、色々考えてしまう。


全然、話まとまらないのですが
とにかく、ショックだったんです。

このショックを伝えたかった。


以上です。駄文失礼しました。


追伸

会議室にてあるお方から、「あなたのその時の感想を聞きたい」的なことをご指摘いただきまして
今は自分自身、色々な感情が入り乱れてしまってるせいか
感想は書けないです。

なので、落ち着いたときにきちんと感想を書かせていただきますです。




2/21 落ち着いてきたので、感想を書いてみようと思う。


まず、自分が思ったこと。
それは恥ずかしながら「怒り」なのだ。

誰に怒ったのか、それは競馬新聞の男張本人。
この場の雰囲気が好きだった、乱してほしくなかった。
その当事、色々とイラついていたこともあったのでまず怒ってしまった。

次にきた感情。
それは「哀れみ」だった。自分の大嫌いなそれを、自分はしてしまった。
なんてこった、って後悔してもしきれないくらいに
自分はアノ人たちを哀れんでしまっていた。

次に「せつなさ」
この状況にいる自分、そして競馬新聞の彼、むすこ。
どうしてこんなにもおなじ人間で、こうも違うのだろう。
神を恨んだ、世間を恨んだ、自分を恨んだ。
不甲斐ない自分にも、また、怒った。

そしてなぜか「愛しく」思えた。

なぜだろう、なぜこんなに愛しかったんだろう。
容姿が好きだったとか、そういうんじゃない。
ただ、漠然と愛しく思えた。
心の奥底から、愛しく思えたんだ。

それは、自分でもよくわからない。


これが、自分の感想。


散文(批評随筆小説等) 競馬新聞の男 Copyright 仲本いすら 2006-02-07 21:00:32
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