うみべの隠れ家
たりぽん(大理 奔)

僕らの住処は小さな漁具小屋
呼びあう吐息を波の声に隠し
漁網に髪を絡ませながら
夜の深まりを体温で追った

雪夜の渇いた闇をとかした雲が
入り江を真冬のガッシュに染める
朝の刃を隠した列なる波の端で
見つめる心を切り刻む
シベリアなまりの北風

海藻の免罪符を投げ捨てて
このまま小舟を漕ぎ出せば
無限に限りなく近い永遠で
海に塗り込められる

浜辺の皎白こうはくにひとすじ
人に馴れた獣の足跡
僕らの
飼い馴らされた野生の足跡

  温もりの匂いを嗅いでいる間
  生きるという事が愛しくなる

獣の住処、小さな漁具小屋
流木の薪が尽きて凍えても
僕らという命をくべるほどには

潮はまだ満ちていない




自由詩 うみべの隠れ家 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-02-05 21:40:51
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