四つのベンチ  デッサン
前田ふむふむ


みずうみに滑る風が微細な音を鳴らして、
朝は呼吸している。
絶え間ないひかりを厳かに招き入れて、
夜のしじまを洗い流す。
目覚める鳥の声の訪れと共にあらわれる、朝霧の眩さ。
真っ赤に湖面を染めて、音もなく水鳥が、静かに歩いている。
濃厚な煙が湖面に流れてゆき、
ゆっくりと交差して、湖面から湧き出る。
それは、日常の風景を隠蔽して、赤だけの世界をつくりだす。
太陽は、朦朧とした金色のひかりを放して、
湖面の上で、朝霧に隠れてまどろむ。
木々は黒く墨を吐き出して、朝に挿入されているが、
物言わぬ液状の儘で佇む。

湖畔には血の色に染まった、
四つの鉄の肘掛が付いている、ベンチが置いてある。
沈黙したベンチが朝の皮膚から剥き出しに、なって、置いてある。
赤い海の世界で骨が四つ並んで、寂しく呼吸している。



自由詩 四つのベンチ  デッサン Copyright 前田ふむふむ 2006-02-05 08:31:47縦
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