動物抄
人間
―1・鳥頭の浩司―
ついさっき
浩司は新鮮な2歩で近所の教会に初めて入り
3歩で誰かの語る神様を引きずり堕ろして
無理矢理に小銭入れの中へ押し込み
手早く生け捕りにしました
4歩で帰宅後
店先からこっそりトマトとカボチャとナスを盗り
トマトは切り込みを入れ
ナスは軽く茹でてヘタを取り
中身をくり抜き陰茎を入れ
押し入れに閉じこもり
象皮症の聡美に模したカボチャを胸に抱きながら
トマトの切れ目から舌で掻き混ぜ
ナスを激しく上下させました
事後、
「トマトとカボチャとナスと、
君と僕と暗闇は、
さみしさで繋がりました」
と
血抜きして
活け〆して
腹から開いた神様の
薄い背中に
ラブレタアを書き出しましたが
5歩目が恥を覚えた代わりに宛先を忘れてしまい
6歩がトイレに入ったまま出てきません
―2・象皮症の雅美―
寝息、窓ノ
伝はるわ
雫
侘助に、
雨露 かほる頃
新しイ御洋服を持つてきて 戴ける
ので
とつても、うれしい、あたくし
それ迄は
蜘蛛ノ糸で
あやとりヲ
シテ待ちます
出来た!、ホウキ
で御掃除致します
良イ子にしてゐれば
侘助も
色付く
雫
で打ち抜かれた
椿ヲ
指で
磨り潰シテ
口紅にシテ
上手におめかし出来たラ
雨
おやみに
なつて戴けるかしラ
―3・馬の耳に尚之―
裏返す裏返す
表札を裏返す
裏返した表札に
筆ペンで同じ名前を書く
裏返す裏返す
見つかってメメタァ殴られる
「俺なんも悪いことしとらんのに」
裏返す裏返す
説教食らって裏返す
目を耳を裏返す
表札を直しながら
畜生を裏返す
裏返した畜生に
5mm単位で俺の名前を書き連ねてドブに流していく
―4・脱兎百合乃―
私走って走って走って
八百屋を過ぎ
漆喰の蔵を過ぎ
県営団地を過ぎ
居場所を求めて三段飛ばし!
転んだ先から迷子になっちゃった!
それでも走って走って走ってる私えらい!
―5・猿回し和輝―
我慢、Yく方sI#レズ述Bellま44tあかく野蒜
地獄、煮La/みVoi之グレタet22櫓だ無垢z(E
知らない!
僕知らない!
無碍、新de.CKm1052胴ギっH/F/I逆いづふ
荒野、Bon'ナぎるも72-45-61で齒ビェK.
助けて!
誰か助けて!
って誰に言えばいいのか分からないから諦めて回りました僕
―6・鼠の心臓の真衣子―
あかるく/ない/話題が/ない/眼鏡も/ない/刺身なんかたべたくも/ない/雪はふら/ない/槍もふら/ない/から楯もいら/ない/いつも二人称が/ない/しのびよる影にはにおいが/ない/から鬼にはなりたく/ない
時計が/ない/ギターの3弦も/ない/夜はやりきれ/ない/元気が/ない/といわれてもにげられ/ない/髪はながく/ない/誰ともしゃべりたく/ない/知恵が/ない/から税金のしくみがわから/ない
へだたりは/ない/携帯も/ない/時間もあそびも/ない/かわいくは/ない/ふかい意味なんかは/ない/夢と希望は/ない/わけでは/ない/そんな自分もきらいでは/ない
―7・老猫の渉―
宛先も本文も
差出人もない手紙に
追伸だけを書き加えて
配達しに出掛けます
水溜まりよけて千鳥足
お願いですから
これ以上
目で追わないで下さい