夕景ノスタルジア
霜天

消えてしまった夏の日のサーカス
なにもない草原に現れては溶けていく
夏の夕暮れはどこか嘘のようだった
煙のようなもの
で、構成されていると
なんとなく信じることにした
わからないこと
適当な理由で仕舞っておけば
それでその日も
世界は知らん顔で回っていた


手をぐるり、回せば
行きたい場所はすぐそこにあった
破裂しそうな入道雲
滝のように落ちる自分と
なりたい自分が滑り込んだ
幼い
そう呼べば疼くような、ぼく、は
仕舞った場所をいつも忘れて
それでも
鉄の錆びたあの味だけは
今も思い出すことが出来る


夕景、ノスタルジア
なにもない草原には雪が今年も積もった
手を広げて後ろ向きに倒れこむ
なんてことは
今でも、時々やっている
見上げていたあのサーカスの巨大なテントは
今も少しもぶれずに
僕の頭上にそびえている
間違えれば
つぶされてしまいそうな
そんな気もする



夕景
煙のようなもの
僕らの足元は今も
そんなもので


自由詩 夕景ノスタルジア Copyright 霜天 2006-02-02 00:19:45
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