犬吠埼 2
遊羽

眼下の海岸は穏やかな風の中闇に枕し
街灯の乏しき光の中にのみ姿を浮き立たせていた
波の音が立つあたりの闇はまっすぐ空へ続き
そのまゝの姿で星々を泳がせていた

灯台は目を閉じ 時折南へと囁くように光を送り
同じ闇の向こうで ナトリウム灯の気怠い色ばかり筋を作っていた
灯台は目を閉じていた 眼下の海岸の眠りを守るように

潮の呼びかけに闇の空は目を閉じたまゝ
眼下の海岸を優しく包みこんでいた
鉄塔の下 聴いたこともないメッセージが繰り返され
灯台の夜は賑やかな孤独の衣擦れに時折目を開いていた

無口な夜は鉄塔に絡み付き 繰り返し星々を瞬かせていた
遠くの海岸でまた ナトリウム灯の色彩が闇に溶け
灯台は眼下の海岸の眠りを守るべく 目を閉じていた



#2006年1月29日 犬吠埼灯台にて即興・投稿




自由詩 犬吠埼 2 Copyright 遊羽 2006-01-29 00:25:45
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