「 つるしもの。一日目。 」
PULL.







一日目。




吊るしてみた。

ウテ子さんに、
教えて貰った通りにやった。

少し重かったけれど、
なんとか無事に吊せた。

後片付けを終えて、
柱時計を見ると、
十時を回っている。

思いの外、
時間を取った。

お腹がへった。

そういえば、
ご飯がまだだった。

今日は重労働をしたので、
湯豆腐と洒落込もう。


藤雪のお豆腐は、
やっぱり美味しい。

熱々の絹ごしが、
ほろほろ歌って、
口の中でとろけるのだ。

お隣のおばちゃんの、
手作り白菜も、
甘くてしゃきしゃきだ。

極上の湯豆腐の後は、
仕上げのビールである。

うまい!。
これぞ本物のビールだ!。

発泡なんたらって、
偽造ビールでは、
こうはいかないのだ。


ほろ酔い気分でいると、
あれが気になった。

グラスを片手に向こうへ。

あれは、
さっきと同じ姿のままで、
吊り下がっている。

しばらく眺めた。
ずっと眺めた。

その夜は、
雨が来るまで、
ずっと眺めて過ごした。




おやすみなさい。













自由詩 「 つるしもの。一日目。 」 Copyright PULL. 2006-01-23 04:32:56
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