べべ
和泉 誠

大きな眼鏡におかっぱ頭
そばかすだらけのべべ

僕は君が大好きだった

君は僕の話をいつまでも黙って聞いてくれた
決して口を挟むなんて野暮なことはしなかった

君は僕がどんなに素敵な言葉を並べて誉め称えても
いつもそっけない返事しかしなかった
でも言葉とは裏腹に真っ赤になる頬がとても愛しかった

後ろ向きなマイナス思考を背負ってるくせに
夢とか理想とかそういうものばっかり語る僕に
いつも金魚のフンみたくくっついてきた

君には誰よりも幸せになってもらいたかった
僕にはそれができると思ってた

でも僕は彼女を救うには
あんまりにも無知であんまりにも無力で
それを知ってたから
彼女は僕のために優しい嘘をついた

ただ側にいてあげればよかった
君をこの手で救おうだとか
一緒に幸せの国へ行こうだとか
そんなこと言わずに
ただいつまでも君の側にいてあげればよかった

運命の車輪は二人を引き離した
それがお互いのためであったのか
それとも悲劇好きな神の趣向か

べべ
君は今何をしてる?

まだ薄暗い部屋から抜け出すことができずに
いつまでも同じ所を彷徨っているんじゃないかい?
君はそれに不満一つもらさないだろうけれど
僕はとても心配だよ

もしも今、もう一度君に会う事ができたなら
そしたら僕はもう何も言わずに
ずっと君の側から離れないよ



自由詩 べべ Copyright 和泉 誠 2006-01-20 14:44:16
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