マグダラのレナを名乗った先輩
和泉 誠

娼婦の罪で石打ちの刑に遭うところを
キリストに救われ改心したマグダラのマリア

それをなぞって自らをマグダラのレナと名乗った先輩

その背丈は子供ほどしかなく
顔も決してかわいいとは言えない
毎週風邪をひくほど病弱で
身体障害者として社会保障を受けていた

彼女はいつもお人形を意識した服装をしていた

僕は当時、彼女に完全に魅了されてしまっていた
何度か本気で彼女を自分のものにしたいと思った

劇場ではまだ観客だったあの頃は
どうして世の中思い通りにいかないんだって
月に一度は泣きながら叫んでた

舞台で役を演じる立場になって初めて分かる

彼女が一体どういう人間だったのか
一体あの時、彼女が何を考えていたのか
なぜあんな滅茶苦茶な僕を見捨てずに
いつまでも温かい目で見守り続けてくれたのか

今からお話しできませんか?
誘いのメールはもう彼女のもとへは届かない


自由詩 マグダラのレナを名乗った先輩 Copyright 和泉 誠 2006-01-19 15:35:31
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