雪うさぎ
ベンジャミン

赤い木の実の瞳から
流れる涙は止まりませんでした



身体の悪い妹に
この冬はどうにも寒すぎて
コンコン、コンコンと
咳を繰り返すたびに
雪が降り積もります

それでも妹は
「兄ちゃん、雪うさぎをつくってよ」と
雪のように白い肌を
少し赤らめながら言うのでした

僕は手袋をはずして
突き刺さりそうな
その冷たさを気づかれないように
やがて
同じ色の小さな庭に
飛び跳ねもせずにできあがった
真っ白な雪うさぎを
妹は
飛び跳ねて喜んだのでした

そして何処からか見つけてきた
赤い木の実を
くりくりとした瞳にはめて
部屋に戻ってからも
同じような目をしながら
ずっと眺め続けていたのでした

けれど
陽がさすほどに雪うさぎは
その身体をだんだんと縮めてしまいます

妹は淋しそうに
「兄ちゃん、うさぎは消えてしまうの?」と

僕はどうしょうもない気持ちになって
うなずくことができません

今にもなくなってしまいそうな
あの雪うさぎの瞳が
僕を見つめる妹と同じに思えて

僕は

「お前がつけてやったあの赤い実が
 春には木の芽になるのさ」と

少し嬉しそうにする妹を見て
僕もまた安心するのでした



     


自由詩 雪うさぎ Copyright ベンジャミン 2006-01-17 11:26:52
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