姿の源 Ⅴ
木立 悟





誰もいない街の上を
独りの鳥が飛んでいた
色褪せた黄金の街だった
かつて金色の泥流に埋もれて滅んだ
古代の街のようだった
乾いた巨大な植物のなかから
鳥は光の色を見ていた
光の音を聴いていた



生まれ変わろうとする旅人が
光のありかを捜している
互いに逆らいあうものどうしが棲む
霧の門の内側に至り
手のひらの光
流れ落ちてゆく光を見つめる
独り歩むものだけが持つあかり
その先にあるものを見つめつづける



燃え上がる音が
神の十視と神の十尾を組みしいている
見えないものの影が
雨の音のなかに浮かんでいる
三つ子の空が手に手をとりあい
地と雨の間をまわりつづけ
金色の街を消してゆく
三つに渦まく夜の下で
手のひらのあかりをいま一度見つめて
独り歩むものは
霧の門の外へと去ってゆく



かえすことなく打ち寄せる
朝の海に落ちた光の群れ
誰もいない浜辺から
ななめ上の空へと
飛び去ってゆく鳥
飛び去ってゆく青
遠く高く 水平線に
いくつかの笑いがこだまする
言葉が 言葉が
表わすことの作為を越えて
文字のむこうへ 色のむこうへ
音のむこうへ
こだましつづける











自由詩 姿の源 Ⅴ Copyright 木立 悟 2006-01-15 17:53:36
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