遠ざかる
はなびーる

あなたが
雲雀の落し物を書き記しているとき

あなたが
コーヒーの甘さに悪態をついているとき

わたしは遠ざかる
遠ざかってゆく


あなたが
もつれた糸を我慢強く解きほぐすとき

あなたが
ただひとつの特別な歌を口ずさむとき

わたしは遠ざかる
遠ざかってゆく


あなたが
この世のたったひとつの
座標だとしても
だからこそ
わたしは遠ざかる
遠ざかってゆく


あなたに問いかけて一瞬ののち
あなたの前にわたしはいない
ただ合わせ鏡に映るリフレインの余情
あなたが答えるまでの
星が生まれ燃え尽きるほどの時間を
あなたから一番遠い場所で待っている

       (三百億光年彼方のあなたの背中)

わたしは従順な影になって
あなたの一挙手一投足をなぞる
あなたのレンズで
もうわたしではないわたしが歪む
しあわせという
重たく沈殿する不純物、ゆえに

       (あなたにとって不可思議であるために)

遠ざかる
遠ざかってゆく


無限に引き延ばされる光の波
鈍く低く、背景をなす旋律の
寂寥





自由詩 遠ざかる Copyright はなびーる 2006-01-15 16:20:32
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