遭難
本木はじめ

手のひらを組んで祈りのかたちなら無人の廃虚に風だけが舞う


街中にひかりあふれてもう星は絵本のなかでまたたくばかり


羽根はもう風にさらわれ剥き出しの骨をひろげるだけの桜木


ロンドンの、パリの、カイロの、モスクワの、ひかりはすべて違うのだろうか


いつの日か違う星座となるだろう燃え尽きてゆくオリオンの腰


夜になれば何も見えなくなる鳥の瞳の底でひかりも眠る




階段を駆け上がる音やがて消え今日も誰かがイカロスとなる






短歌 遭難 Copyright 本木はじめ 2006-01-13 00:31:43
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