乾いた涙がボクの心を濡らした
時雨

「それはいわゆる反抗期という奴です。」
それはボクにもなんとなくわかる。
わかるからと言って、このムカムカする反抗期をどうにかできるわけもなくて。

何気ない母さんの言葉がボクの心に針を刺す。
その痛みはけして耐えられないものではなかったけれど、
ボクの心はまるで風船のように

割れたのだ。


気付いたときには何を言ったのかよく覚えてないボクと、
ほんの少しだけ目を丸くした母さんが居た。

母さんは強い人だ。
きっとボクは酷いことばかり言ったろうに、
いつもと変わりなくボクの頭を叩き、いつものようにボクを叱った。
そしてボクはそのことに安堵したのだった。

夜、なぜかよく眠れないボクとなぜか明かりの消えない母さんの部屋。
でも母さんは母さんの部屋でちゃんと寝ていた。

疲れきった顔に涙の跡を残して

ボクはその乾いた涙を見たとき、その涙が誰のせいで流れたのかわかった。
それは、予想ではなく確信。
その瞬間、ボクの心がジワリと濡れた気がした。


自由詩 乾いた涙がボクの心を濡らした Copyright 時雨 2006-01-11 21:19:39
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