噴水の日
霜天

欲しがるように風が吹くのを
あなたはとても嫌がりました
ありふれた人に、姿勢は鋼鉄で空は近くて
順番待ちの列には顔色ひとつ変えずに
参加することに迷わない
そんな
落ちていかない夜の一枚の

人でした


 間違える気などないというのに

  私は、
  わたしから零れていけない一言を
  受け取る器のような世界、小さなそれを
  見つけたような気がするので
  もう、間違える、私はわたしを
  繰り返してしまうばかりなので


帰ろう、そんな場所へ向かう
つかもうとした手のひらはとても冷たいもので
それが、季節のせいなのか元からなのか
境界はどうにも曖昧で
とりあえず走ることにして
プラットホーム、朝に、眠っている人に
起こさないようにおはようといって、あなたは
白線の内側へと怒鳴られては、立ち止まる
帰ろう、そんな旅の
いつまでも進めない世界


細長い待合室で
順番待ちの番号札を、一枚といわず次々と
引き抜いていく、ありふれた人、迷わない姿勢で
私はそんな隣で背伸びをしながら
私はわたしから、噴出していく言葉の行方を
ぼんやりと眺めている
どこへも行かない、けれど、どこへも行ける
そんな旅の、どこかで


もう一度さよならと、言ってみることにします
立ち止まるあなたに
噴水みたいに、ばらばらに


自由詩 噴水の日 Copyright 霜天 2006-01-10 01:39:18
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