永遠
umineko
私が時に冷たくなるのは
今が永遠であると
錯覚しているからだと思う
病室の父は
1月は忙しいのだ寄り合いも
たくさんあるのだといって駄々をこねる
ただのねんざが長引き
故郷が豪雪であるのも相まって
しばらく休養の意味もかねて
入院してもらっているが
私は
これでもかと思うくらいの
冷たいあしらいだ
そりゃ
あなたは患者で
私は看護師
会話もひとまず業務の一部
よく眠れましたか
食欲はどうですか
お熱はいくらでしたか
私はたかをくくっている
今が永遠であると
信じたがっている
そうでないものを
たくさん 見てきた
それなのに
なぜ
人間の耳は
特殊な指向性があるという
特定の対象だけを
聞き取ったり
消し去ったりする力
おそらく
私の意識もそれに似て
何か大切なことだけが
ぽっかりと 見えない
おおみそかのカウントダウンは
去りゆく年と
まだ見ぬ期待への
橋渡しに過ぎないけれど
いのちは
欠けていく数字の次は
いったい
そこはどこなのだろう
ああ
あとこれ
着替えだから洗濯しといた
そうか
そ
病室までの廊下の距離は
短くなったり
遠くなったり
見えないものが
見えたりするけど
たぶん
まぼろしだと思う