永遠
umineko

私が時に冷たくなるのは
今が永遠であると
錯覚しているからだと思う

病室の父は
1月は忙しいのだ寄り合いも
たくさんあるのだといって駄々をこねる

ただのねんざが長引き
故郷が豪雪であるのも相まって
しばらく休養の意味もかねて
入院してもらっているが

私は
これでもかと思うくらいの
冷たいあしらいだ

そりゃ
あなたは患者で
私は看護師
会話もひとまず業務の一部

よく眠れましたか
食欲はどうですか
お熱はいくらでしたか

私はたかをくくっている
今が永遠であると
信じたがっている

そうでないものを
たくさん 見てきた
それなのに 
なぜ

人間の耳は
特殊な指向性があるという
特定の対象だけを
聞き取ったり
消し去ったりする力

おそらく
私の意識もそれに似て
何か大切なことだけが
ぽっかりと 見えない

おおみそかのカウントダウンは
去りゆく年と
まだ見ぬ期待への
橋渡しに過ぎないけれど

いのちは
欠けていく数字の次は
いったい
そこはどこなのだろう

ああ
あとこれ
着替えだから洗濯しといた
そうか


病室までの廊下の距離は
短くなったり
遠くなったり

見えないものが
見えたりするけど

たぶん
まぼろしだと思う
 
 
 


自由詩 永遠 Copyright umineko 2006-01-09 23:46:08
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