強がりの裏の嘘
和泉 誠

分かっているだろう?
だって僕の強がりは
君が聞いてくれなきゃ
まるっきり意味がないんだ

君は僕にはいつも必須な憧れの人
きっと君を間近で見たら
よだれを垂らしてしまうよ
あまりにもおいしそうで

狼と羊の友情を描いた物語
そう言えばそんな映画が上映されてるね
ちょうどあんな感じだと思うよ
君と一緒じゃなきゃ観に行く気はないけれど

一枚の壁隔てて
僕らはずっとお話ししてきた
僕の話がほとんどだったけれど

この壁が時々すごく憎らしくなる
その一方で
この壁があるから安心してるんだ
僕はそれは臆病だから

僕は夢の世界の住人
だから現実と戦うのがすごく苦手なんだよ
それに現実でなければいけないってこだわりもないし

だからね
ある意味これが僕の理想なんだ
現に昔の僕はこれを望んでいた

ただね
前々から話しているとおり
僕は何でも飲み込む闇の胃袋を持っているんだ

この幸せなんてとっくに食べてしまって
もっとおいしいものを食べたいって言ってる

分かるだろ?
もしも君が君のすべてを僕に食べさせてくれても
僕はまたもっとをおいしいものをって
君を食べ捨ててどこか遠くへ出かけてしまうことが

僕は幸せにはなれないよ
おそらく一生
あるいは年をとってボケてしまうまでは

ともかく
君に言いたいことはね
僕をずっと見ていてちょうだい
僕はきっと君の期待に応えられると思うから

君に見られていると感じるだけでね
僕はそれはもうがんばらなきゃって気になるんだ
格好つけて強がり言っても
それは結局君に聞いてもらいたいだけなんだよ

君のことが好きなのか分からない
こんな強がりも
君に聞いてもらえるから
だから意味があるんだよ


未詩・独白 強がりの裏の嘘 Copyright 和泉 誠 2006-01-07 09:27:25
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