コミュニケート

言葉よ
臆病にならないで
勇気をだしてそこから飛び出しておいで

ふたりの唇は
こんな近くにあるのに
人差し指でかたどれるほど傍にあるのに
きみはいつも私たちに背をむけて
あらぬ方向に駆けていこうとする

まっすぐに上がっておいで 
胸底の大木に身を凭れかけ
ひとりぼっちだと焦れたりしないで
夢を見ることもできない夜の湖岸を
とぼとぼと彷徨したりしてはいけない

確かめることの怖さこそ
ポケットに深く深くしまって
何度残酷な思いに突き当たっても
ヤキモチ焼きな運命に試されても
壊していいのは 涙の形
思いの形じゃない

言葉よ
今は笑顔でなくてもいいから
自尊心なんか棄てて飛び出しておいで

きみはあの日
夏の風に乗ってあれほどの距離を
愛の手応えをただ一心に求めて
恍惚の色した翼で飛んできたじゃないか

なくせないものの
柔らかな手触りを思い描いて
なくしてしまうかもしれない
その身のすくむ恐怖を乗り越えて

欲しいものは こころ
きみが探しているものは こころ

言葉よ
臆病にならないで
勇気をだしてそこから飛び出しておいで
私のこころにむかって

そして 私の言葉よ 
勇気をだして
求めるこころまで飛んでいきなさい


自由詩 コミュニケート Copyright  2006-01-06 21:07:22
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