僕と人形劇
和泉 誠

小さい頃から
物語を作るのが好きだった
たくさんの人形を操って
壮大な物語を作るのが

最初は積み木だった
お母さんは中くらいの積み木で
原子爆弾で吹き飛ばされた
小さな積み木達はその後を追いかける

次はブロックだった
魔法使いのおじいさんはそれは強くて
大きなロボットに乗っていた
ドラゴンなんてちっとも怖くなかった

次はぬいぐるみだった
勇者ゴン太は狐なのか狸なのか
はっきりしなかった
でもツマヨウジの剣はとても格好良かった

次はゲームキャラクターだった
お姫様は優しいけれど勇敢で
そしてちょっとわがままだった
僕は彼女の事が世界で一番好きだった

大きくなった僕は
自分を使って物語を作るようになった

目に見えるもの
手で触れられるもの
人形になった僕には
すべてが偽物っぽかった

でも、それでもよかったんだ
自分を使った人形劇は
それはそれは楽しいのだから

ただ、大人が突然現れて
それをめちゃくちゃにするのが
僕は大嫌いだった

人は僕を哀れだと言った
愚かだとも言った
僕はそれを聞く度にただ泣いていた

大人がいなくなった後
涙を拭いて、僕はまた人形劇を始める
誰のためでもない自分のための人形劇を


自由詩 僕と人形劇 Copyright 和泉 誠 2006-01-05 19:43:02
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