恋の瞬間
比呂正紀

饒舌な彼女の隣りで頬に手を当てて頷く 君に恋した

ティーカップの淵をクルクル撫でている細き指先 俺は恋した

「ぽっちゃりとした唇がきらいなの」尖らす唇 君に恋した

「ばかみたい」そっぽを向いた横顔にときめいている 君に恋した

茅ヶ崎の堤防の上の午前二時寄り添ってくる 君に恋した

有り余るけんちん汁を目の前にカレー粉を持つ 君に恋した

いずこへとゆくことよりも共にいる時間が大事 君と恋した

穢れない真白き肌に浮かぶ汗くちづけている 君を愛した

ゆるやかな放物線を描いてた君のすべてを 忘れないから
                  




短歌 恋の瞬間 Copyright 比呂正紀 2005-12-30 10:01:49
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