冬の円盤
岡部淳太郎

円盤が
おまえの頭上高くを浮遊する
未確認の淋しさを乗せて
円盤は 氷点下の空を浮遊する
おまえの淋しさを憐れんで
おまえの淋しさに同調して
(いずれも認められていない淋しさ)
空の白さと その奥の宇宙の暗さを表すように
葉を失った枝に風の音を吹きつける
風は おまえの淋しさを吹き過ぎる
風は おまえの淋しさを吹き荒れる
円盤はきっと
宇宙のどこかで誰かに投げられてやってきた
投げられたことの遠い淋しさ
それならばおまえは
取り残されたことの淡い淋しさ
(いずれも認められていない淋しさ)
宇宙はこんなにも素早く回っているのに
円盤もおまえも
こんなにも緩慢な速度で回らなければならない
冬の温度はまだ
星と星の間に横たわる寒さに比べればましなのだが
おまえはまだそのことを知らないでいる
あるいは 考えるすべを持たないだけなのか
おまえは硬い舗装路の上の樹木
おまえは硬いかさぶたの下の傷
(いずれも認められていない淋しさ)
円盤はゆっくりと
その淋しさにふさわしい速度で回転しながら
おまえの淋しさに ひとつの歌を吹きかける
おまえは答えるすべもなく
ただ地上からほんの少し離れた思いでつぶやく
星の向こうの人びとも
同じ淋しさを感じることがあるのだろうか。



(二〇〇五年十二月)


自由詩 冬の円盤 Copyright 岡部淳太郎 2005-12-26 22:34:15
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