未明の鳥
A道化






ただひとつの意味でだけ
朝であればそれでいい


女は、暗がりから
チチチチチ、が発されるのを待っている
さあ、と
鳥が開かれるのを、鳥が始まるのを
待っている


ただひとつの意味でだけ
朝であればそれでいい


もう、少女ではないから
気体みたいに淡い夢とは分離している
女は、眼を閉じても女であると知っている
一回分の寝返りと同じ質量の女であると
知っている


嗚呼、女は、女は、夢見るような目つきから
祈るような手つきから、分離して、そっと、寝返りを打ち
鋭く美しい予言に密やかに備える耳で冬の暗がりを伺い
発端を、発端を、発端を
嗚呼、わたしは
発端を、待っている


ただひとつの意味でだけ
の、朝は、それでも
把握し切れないほど雄大な鳥だろう
最初から先へ先へ飛び発つ姿勢の
そして、瞬く間に飛び去る速度の


だから、女は
寝返りによってからだを要約し
常に発端を待つ多感な耳になってゆく
無意識に、ひとつの
些細であどけない鳥のような



2005.12.24.


自由詩 未明の鳥 Copyright A道化 2005-12-24 11:46:38
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