誰か、ささやけ
たりぽん(大理 奔)


  皮膚という薄皮の中に
  なまあたたかい
  生がある
  そう思いこんでいる

骨にまとわりつく体を
巡っていく流れに
生がある
そう思いこんでいる

  あなたとつないだ手が
  汗ばむほど
  生が溢れている
  そう思いこんでいる

この世には
あなたと私がいて
生きている
そう思いこんでいる

  不安を洗い流す雨も
  凍てついて舞いつもる
  生はない、生きる、と
  凍てつく言葉で舞いつもる

強く抱きつづけても
わからなかったあなたを
遠く離れた気圏からの冷たい結晶に
あたたかく感じる孤独

  この薄皮の中で
  うごめく血肉ではない
  うごめく血肉でもある
  生があると

誰かここに来てささやけ
生はない、生きていけ
有るのではない、在れと
誰かここに来てささやけ





自由詩 誰か、ささやけ Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-12-22 23:54:23
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