四行連詩 独吟 <刻>の巻
塔野夏子

*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語か句をとり、その語か句を、自作四行詩の第一行目に入れること。
(この1か2の規則を守って連詩がつづけられる場合、最初にえらばれた鍵となる語か句が再び用いられた場合、連詩が一回りしたとみなして、終結とし、その連詩の一回りの題名とすることができる)




宝石に縁取られた心臓は
孤独の形の夜に閉じられて
声を押し殺し啜り泣いている
刻一刻黒ずみながら

     *

月が鋭角化する刻限
白黒市松のなめらかな床の上
帽子と仮面と外套をつけた一団が
何処からともなく出現する

     *

散乱したい
散乱したい
仮象の空間に吊された白い部屋で
無機質な断片となって

     *

南の出窓に腰掛けた君と西の壁に凭れた私の
交わす言葉はどうにも宙にさまよいがちだ
どうやらこの部屋が部屋であることに飽和して
こっそりと無辺際への溶解を試みているのだ

     *

夜明けに溶けだす空の縁から
溢れだす青白いビブラート
そよいでゆく光に身を浸せば
幾千ものデイジイが笑いさざめく

     *

どんな時を計るのか
知らないままの無邪気な手が
闇の粒子を封じ込めた
砂時計をひっくり返す

     *

寄せては返す 無意識の波に
洗われつづける 意識の岸辺
予感から盗みとった 謎の記号を
ひそかに刻印したのは どの岩にだったか






自由詩 四行連詩 独吟 <刻>の巻 Copyright 塔野夏子 2005-12-19 21:34:16
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