クリスマスカンパニー
落合朱美


ああ忙しや忙しや
三太のオヤジは右往左往

---なにしろ年に一度の出血大サービスだからな
  子供ら誰一人漏れのないようにな
  平等に配んなくちゃならねぇしな
  え?そりゃあカンパニーつったってさ
  社長も社員も俺ひとりさ
  だからほれ、このとおりの大忙しよ
  え?これだけのプレゼントを仕入れる資金?
  こんなおんぼろ会社にあるとは思えねえってか?

部屋中を埋め尽くしたプレゼントの山の中
三太のオヤジはにんまりと笑った

---そりゃあもう、日頃の小さな積み重ねよ
  まあどっちかってぇとこれが本業?
  年に一度は利益を皆様に還元ってぇわけよ
  しかしなんだね、こう景気が悪いとさ
  稼ぎが少ない割りに物価は高いし
  ここ数年は赤字だね。やってらんねえよ

部屋の隅の戸棚の中には
ねずみ色の手拭と唐草模様の風呂敷が・・・

---え?俺が偽善者だって?
  おいおい、冗談言っちゃいけねえよ
  金は天下の回り物
  なんの投資もなしにプレゼントだけ貰おうなんて
  そっちのほうがムシがよすぎるってぇものよ
  世の中ギブアンドテイクってぇわけよ

定番の赤白ルックに着替えた三太のオヤジは
「いいか、これは企業秘密だからな
 他言は無用だぜ」
と念を押して深夜の街へと飛び出していった

あまりに勢いよくドアを閉めたものだから
はずみで朽ちかけた看板が傾いた

『(資)クリスマスカンパニー
   代表取締役
   戸名甲斐 三太』







自由詩 クリスマスカンパニー Copyright 落合朱美 2005-12-18 16:48:17
notebook Home 戻る