クリスマスカンパニー
落合朱美
ああ忙しや忙しや
三太のオヤジは右往左往
---なにしろ年に一度の出血大サービスだからな
子供ら誰一人漏れのないようにな
平等に配んなくちゃならねぇしな
え?そりゃあカンパニーつったってさ
社長も社員も俺ひとりさ
だからほれ、このとおりの大忙しよ
え?これだけのプレゼントを仕入れる資金?
こんなおんぼろ会社にあるとは思えねえってか?
部屋中を埋め尽くしたプレゼントの山の中
三太のオヤジはにんまりと笑った
---そりゃあもう、日頃の小さな積み重ねよ
まあどっちかってぇとこれが本業?
年に一度は利益を皆様に還元ってぇわけよ
しかしなんだね、こう景気が悪いとさ
稼ぎが少ない割りに物価は高いし
ここ数年は赤字だね。やってらんねえよ
部屋の隅の戸棚の中には
ねずみ色の手拭と唐草模様の風呂敷が・・・
---え?俺が偽善者だって?
おいおい、冗談言っちゃいけねえよ
金は天下の回り物
なんの投資もなしにプレゼントだけ貰おうなんて
そっちのほうがムシがよすぎるってぇものよ
世の中ギブアンドテイクってぇわけよ
定番の赤白ルックに着替えた三太のオヤジは
「いいか、これは企業秘密だからな
他言は無用だぜ」
と念を押して深夜の街へと飛び出していった
あまりに勢いよくドアを閉めたものだから
はずみで朽ちかけた看板が傾いた
『(資)クリスマスカンパニー
代表取締役
戸名甲斐 三太』