事情をしらない猫
炭本 樹宏

 事情をしらない猫はあくびする
 歯車のなかでせいかつするぼくは
 くだらないことで悩む
 そんな僕に猫はひざにのって
 あくびする

 事情をしらない猫はえさをねだる
 しがらみのなかでこさえたエサ代を知らず
 当然のようにむさぼりつく
 
 猫は明日の心配などおかまいなしだ
 そんな猫に相談事を話かける
 
 猫は黙って手をなめてくれる
 僕の絶望も苦しさもしらずに
 食べたいときにたべ寝たいときにねる

 幸せを比べても仕方ないけど
 人波に飲まれて日々歩く人生行路
 毎日がサバイバル
 
 事情を知らない猫はそんなこともお構いなしに
 ゴロゴロのどを鳴らして
 僕にあまえてくる

 事情をしらないから
 僕は猫を可愛がるのかもしれない

 今も心配事などかまわずに
 猫は無邪気に寝息をたてて寝ている
 のんきな顏をして無防備に

 それがたまらなくいとおしい
 
 事情をしらないねこ
 それだけで
 僕は救われる




自由詩 事情をしらない猫 Copyright 炭本 樹宏 2005-12-01 00:22:08
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