列なる者
かぜきり

ぱたむ


頭の中で
効果音をつけながら
目前で閉じた電車のドアをみつめる

なめらかに閉じた金属の扉はわたしがいっぽ後ろに下がると
そのままよこすべりしていった

くらり


まどろむ空間で
乗るはずだった電車は
既に視界におさまる場所になく
モータの音を響かせて・・・・
まばらなホームの空間が楚々とひらけてゆく・・・・

向かいのホームには駅員が一人
こちらを眺めているのかいないのか
目線散らして立っている・・・

わたしは一歩下がったままの姿勢で
うつむいて・・・・
ポケットにてをごそ、 とつっこむ

顔をあげれば駅員は黒猫になっている・・・・

ポケットの中は目的のに の を にあ あにの お のもので はなくて
なにを忘れていたのか思い出すことなく・・・

てのひらを広げると
そこには

100円玉のかけら

ホームの隅の自販機に
カップコーヒー淹れて貰い
かたわらですする

苦い
変な顔をして
溜息をつく、と

駅員だった黒猫が
足元から見上げていた

口になにかくわえている


季節に消費される空白の一瞬


紅葉・・・?


あ そうか
朝ごはん食べてなかったかも

とひとりごちて駅猫の口元をよく見てみると切符だった

飲み終わったカップを丁寧におりたたみ
積みあがったゴミ箱の脇に置き

ホームのはしからとびおりて

ねこのくちから
そっとうけとり

ぽろり

序奏をくちずさむ・・・


自由詩 列なる者 Copyright かぜきり 2005-11-29 18:38:12
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