ふゆざくら
銀猫

最後の赤を脱ぎ捨てた
紅葉の合間から冬の声が届くと

過ぎた年月は
あどけない写真に
痛々しく画鋲の痕をつけながら
かなしみを、ときめきを、
なつかしさのオブラートに包み込む


あの時
となりに居た
きみの名前より
かの日を分け合った
そんな本当が
背骨となって
わたしに宿る

思い出は
輪郭も不確かな
夕刻の影法師に姿を変えながら
わたしのうしろに伸びて
音もなく寄り添ってくれる


ひなたの温度は
いつか抱き合った
ぬくもりに似ている

もうこの道行きを
ひとりで歩けるだろう


今宵の闇に
風景は少しずつその色を失い
冬に咲く桜は
群れず
仄かな白を讃う


自由詩 ふゆざくら Copyright 銀猫 2005-11-27 21:35:17
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ふゆの花