ノート(せなのいし)
木立 悟
思いも無いのに思いどおりの
見てはいけない夢からさめて
終わり はじまるわたしがあり
気づけば朝を歩いている
かがやきやたかなりを
しあわせと呼ぶことに
ためらいくすぶる背の声があり
気づけば鉱にはばたいている
痛みは熱を浴びつづけ
痛みの顔は溶けてゆく
冷えて生まれる波の模様に
わたしは何も描けないでいる
鉱は夜を閉じ込めたまま
荒地を囲むみどりを映す
定まらぬ朝のまぶしさに
夜は虹彩のように伸び縮む
わたしはどこまでわたしなのか
わたしはついに知ることなく
応えきれずにここでうごめき
贖いきれずにここではばたく
赤子のすがたの午後を抱き
階段をひとり昇りゆくひと
数字にも文字にもならない笑みが
わたしの背からこぼれおちる
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