クリオネ
銀猫

どことなくストレス加減の昼休み
冷たい珈琲に浮かんだ氷を
ストローの先でつついたら
猫みみのかたちの小さな生きものが
ちょこりと顔を出した


頭痛の道連れに
こんな小粋な錯覚が訪れるはずもなく
空いた皿に目をやって
疑問符つきの息をひとつ
次の煙草で狼煙を上げて
平常心とか
落ち着きとかの心理を掻き集め

も一度 、しゃららん

茶色の海をかき乱すと
猫みみの生きものに
赤い心臓と
天使の真似事のような二枚の羽根を発見した

海水を吸い上げ
正体を見てやろう
乾いていない喉に
流氷は鋭すぎるのだけれど

水の中でしか呼吸できない猫みみは
気配を察して亜空間に逃げ込んだらしい


昼時を過ぎた街なか
溜め息で揺れた小枝に
赤い風船が引っかかっていた






  ※「クリオネ」に関するご参考として。
    http://www.mon-cci.or.jp/kurione/kurione.html







自由詩 クリオネ Copyright 銀猫 2005-11-23 20:55:08
notebook Home 戻る