彫刻家の夜
千波 一也


嘘つきだった君を剥がしてあげよう


昼間のシャツは
白すぎたんじゃないか
夕飯のサラダは
潔すぎたんじゃないか

嘘つきだった君を剥がしてあげよう



すべてを明け渡して
はだかになった姿は
眼球の奥に 銀を灯す

ふたり
急ぎ足で溺れてゆく


健気な暮らしは 嘘か 真か
ひとつ、剥ぐ
今宵の素振りは 夢か 現か
ふたつ、剥ぐ

うそぶく事も 見抜けぬ事も 等しく罪
わからぬ事も もとめる事も 等しく罪

ふたりの背後に業火が揺らめく



女は
像として剥がれておちて
男は
原始の森の獣のように
炎の不思議に汗にまみれて
知らず知らず 身を削る


漆黒の夜は
星々を常に新しく輝かせるのだ

まるで
芸術家の面持ちで




自由詩 彫刻家の夜 Copyright 千波 一也 2005-11-20 15:32:42
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