幾つか、わたしの名前を
本木はじめ

澄んだ光の菜の花 そうしてかざした手のひら
数を数え飽きたらすぐに ここまで走っておいで
                                
                           守り手



似たようなところで笑うぼくたちと違う螺旋を持っている義姉


廃園で壊れた風とたわむれる姉と真白き蝶と青空


名付ければひとつの罪となることを 仔猫の義父となるゆめ覚めて


約束の時間は過ぎて弟は降りしきる雨粒を数える


妹の蹴ったバスドラムの音に痙攣しているえんげきぶいん


帰郷する故郷の庭に深い深い巨大な廃墟のような父親


母そして海は遠くで鳴るだろうこの手にいつしかつかむべき詩も


行ったことないのになぜか懐しい向日葵畑は祖父の記憶か


あきらめてばかりの兄があきらめてばかりの友に語る来世を


若かりしころの写真の祖母の手の花は何色だったのか問ふ





短歌 幾つか、わたしの名前を Copyright 本木はじめ 2005-11-19 20:05:13
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