おっぱい
大覚アキラ

女が大きな欠伸をすると
バスタブの縁から
たくさんの湯が溢れて
波立つ湯船に浮かびながら
おっぱいが揺れる

女の身体の
一部分ではなく
別の生き物のように
たぷん
たぷんと揺れる

揺れながら
おっぱいは考えている
どうすれば
この女から逃れて
自由になれるのだろうかと

自由になったら
どこか山奥の涼しい草原で
静かに暮らしたい
透き通った波が打ち寄せる
美しい海岸でもいい

そうしたらもう二度と
ゴツゴツした男の手で
乱暴に掴まれたり
荒っぽく揉まれたり
そんな目に遭うこともない

ぼんやりとそんなことを
考えているうちに
すっかり
湯にのぼせてしまい
ワケが分からなくなって

けっきょく
女の胸につかまって
おっぱいは
たぷん
たぷんと揺れ続けていた


自由詩 おっぱい Copyright 大覚アキラ 2005-11-19 00:05:38
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