夜と背
木立 悟




ふいにはじまり
ふいに終わり
悲しくそこにとどまるもの
晴れた夜の無灯火の群れ
光をちぎり 与える誰か
ちぎれる前の 光のありか
地に倒れた外灯が
赤い星を聴いている
青に 白に
高鳴る音を聴いている


雨の日の屋根に立ち
大きな羽のつけ根を見ている
夜に降りつもるものたちの音
冷えては軋む鉄のふるえを
淡く激しくまたたかせながら
背は雨の火を浴びている


明るさのそろわぬ外灯を
夜の雲間晴れ間は過ぎ去り
雨を追い 鳥は来て
水の目はあふれ
屋根の上 あふれ


帰りそびれたものから先に
帰る場所などないと気づき
雨は重なり
瞳はひとつ
羽は無数に
曇へと昇る
待つもののない
曇へと昇る


地のどこかで繰り返される
水が水に降りそそぐさま
かすかな滴の軌跡のなかに
あまねく還る音を聴く
とこしえ巡る音を聴く


裏の痛みが表に響き
よろこぶことの苦しみを知り
それでも夜によろこびうたい
背の物語に耳かたむける
空を見つめ 耳かたむける








自由詩 夜と背 Copyright 木立 悟 2005-11-18 22:24:58
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