無題
岡部淳太郎

あの海の家はどこにあっただろうか
夏の
暑すぎる昼下がり
そこで笑っていた太陽のような人びとは
どこに行ってしまったのだろうか
時というものが絶えることなく
いつも継続して流れてゆくとは
考えてみれば妙なことだ
誰もがあそこで止まりたかったのに
笑い合ったままで
止まりたかったはずなのに
今年もいろいろありまして
もう冬ですか
暖冬だけど 冬ですか
このまま行けば
いつか
世の中から詩人などひとりもいなくなってしまうであろう
そんな物騒なことを
予言した者がいた
詩人の血脈は絶えて
いまももうすでに
詩ではないものに取り囲まれて 静かに
耐えなければならないというのに
もう冬ですか
暖冬だけど 冬ですか
笑い合っていた
泣き叫んでいた
太陽のような 台風のような
感情のある
言葉だった
冬の砂浜にひとり立つ
私は詩だ
あの海の家はどこにあっただろうか



(二〇〇四年十二月)


自由詩 無題 Copyright 岡部淳太郎 2005-11-11 20:44:53
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