真知子
ピッピ
くりくり
くるくると透明が
世界を構築している夜でした
星空が邪険に
その様子を見下ろしていて
「真知子」
と呼ぶ声がしましたが
わたしの名前は真知子ではありませんでした
もう名前を呼んでもらう人もいません
アンプをつないで
生きていることを証明するのにも疲れました
透明は朝の成分です
透明は朝の成分です
撥ね返そうとする星の光の力は
まったく役に立ちませんでした
透明は夜を侵食しながら
朝になっていくのです
「真知子」
わたしは真知子でした
昨日をふりかえりふりかえり帰ります
明日は果てしなく遠いくせに
夜風に流された髪に
においがうつってしまってどうしようもありません