坂道にて
松本 涼

真正面の三日月を眺めながら
帰りの坂道を登っていた

薄ぼんやりとしたその境目が
どこか僕に添うようで

しばらくの間僕はじっと
三日月を見つめて歩いた


するとやがて三日月は
空に滲むように膨張し始め

少しお腹が出た
半月になって止まった


ほぅ
と僕は溜息をついて
まだしばらく半月になった三日月を
見つめ続けた

すると半月になった三日月は
今度は細かく震えるように膨らんで
はち切れんばかりの満月になった


それから
僕は空から目を逸らし
真っ暗な舗道だけを見つめて坂を登った

坂の上でもう一度だけ空を見上げると
そこには元の三日月が
静かに光を讃えていた



結局のところ
どんな形だとしても

それが僕の
望んだものなのだろう





自由詩 坂道にて Copyright 松本 涼 2005-11-07 20:40:43
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