飛行機は頭上を飛ぶ
チアーヌ

これから先何年経っても忘れない
そう思ったことさえ忘れてしまう
あなたもきっと忘れてしまった
お互いに忘れてもう二度と会えなかったら
死んでしまったことと同じ
わたしはきっと忘れない
血を吐くほどそう思った
思ったことは事実だ
いつかきっとまた会いましょう
二度と会えないかもしれない人に何度もそう言った
夜の空港はまるで空気清浄機がハイテンションで
まるでビニール袋を被ってしまったみたい
わたしは息が詰まる
わたしはけしてあなたを忘れないと
何度も何度も何度も
それはもうずっと昔の話

そんなことを思い出した

もうなんでもないわ
どうしてかしら
「ここで止めて」
そう言ったら彼は車を止めてくれた
高速道路を降りてすぐのネオンサインまばゆいホテル街
少し離れて
彼は煙草に火をつける
わたしは車のドアを開け夜の中に降りる
飛行機が低い場所を飛んで行く
二度と会えない場所に
もう誰も入れない
だからわたしは優しくして上げようと思う
優しくしようと思う人には
昔はそんなことできなかった
もう忘れてしまった
もう死んでしまった
飛行機は頭上を飛んで行く
涙なんか出ない
泣くべき場所でも泣くべき時でもない
でも
喉が渇いた




自由詩 飛行機は頭上を飛ぶ Copyright チアーヌ 2005-10-24 10:34:23
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