stiGma


緑の日に 故郷を歩いた
雨なのに 人は多かった
知らない人ばかりだった
みんな違う色の服を着ていた
どの色もおれの服の色と違った

がたがたがた
アーケードが風雨で落ちた
女が三人 下敷きになった
誰も気にかけなかった
女たちの服が血に染まった
おれの服の色と同じ色になった

ひたひた
おれの背中を 何か走った

見た見た うん 見た見た
少年が二人 噂していた
興奮で揺り動かされる 肩
大仰に身振りを交える 話し方
首を横に振りながら嘲る 笑い方
すべてがここで走り回っていたおれと違った
いや 違った
おれはここで生まれたのではなかった
ここにおれを知るひとはなかった
おれも誰も知らなかった
故郷はおれを育てなかった
下敷きになったままの女たちの顔を見た
どれも知らない顔だった
アーケードはやけに光っていた

うつむいて歩いた
雨はまだ降っていた
そのまま故郷を出た
また
それでも歩き続けた



どこに行っても 知らない顔ばかりだった


知らなくてよかった



緑の日は 落ち着く雨が降った


自由詩Copyright stiGma 2005-10-15 02:37:46
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