光がひらく原
木立 悟
船の重さに泣く海から
浪のかたちの水柱
けもののように吠えのぼる
冷えては骨に染まる鳥
心なき王国をかいま見る
低い月の光にまみれて
甘いにおいを
鏡の道を
鳥は流れる
空の見えない道の両側
空の生きものたちがゆらめく
空の底に歌があり
光が原をひらくのを見る
金に揺れる草花が
斜面の墓地を照らしている
冬の終わりがはじまる日
はじまりがはじまりで在りつづける日
鳥はひとり豊かだった
消えてゆく自身を感じながら
忘れていた言葉が次々と思い出されて
降る光 遠い光に微笑んでいた