打ち上げ花火
灯兎

静寂を破る蝉時雨 湿った空気を揺らす陽炎
熔けた夢にも気付かない
傾いた陽が眩しくて ただ流される

行き着いた波止場 雨の匂いが垂れ込める
誰の視線も一点を捕らえる

重い空にも 人の手にも
縛られず 昇る煙
雨を弾いて花を咲かせた

爆音にも歓声にも耐え切れず 背を向けた
乾いた街 ゴミ捨て場
ただ懐古の吹き溜まりへ

飴色のビルが映した 花火の影
夏の終わりにささやく夜風
この街は 揺り籠には小さすぎる


自由詩 打ち上げ花火 Copyright 灯兎 2005-10-09 13:54:16
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