午後のはじまり
木立 悟





突然の雨に驚き
空気が動き
生まれた風は
生まれたときから不機嫌でした


埃っぽい路が
陽や曇を浴び
濡れた光を浮かべ
空を見つめているのでした


蜘蛛でも蛾でもある生きものが
雨あがりの土を這い
渇いた木陰にたどりつき
渇いた羽音をたてるのでした


うっすらと見えない色をかぶり
音を受けとるものの手は
水気のない陽の
奇妙なたたずまいを織るのでした


風が雨から目をそらし
やみくもに駆けふと振り返るとき
鳴ることなく錆びた窓際の風鈴が
一度だけ小さく鳴ったのでした


翳りが翳りにつくる水紋
源から離れたひとつずつが
かすかに震えるひとつずつに向かい
降るように降るように話しはじめるのでした







自由詩 午後のはじまり Copyright 木立 悟 2005-10-09 13:12:49
notebook Home 戻る