ワルツ
松本 涼

朝方にヒマを持て余したトカゲが窓からふいにやって来て
「僕とワルツを3曲ほど踊ってくれませんか」
と言った

寝惚けた私は夢と間違い
「ワルツは上手くないけれど 面白そうなのでいいですよ」
と軽い返事で受けてしまった


するとトカゲは
「僕と踊るなら君もトカゲにならないと」
と言うので 私はトカゲになることにした


トカゲのワルツは軽やかで気分が良かったので
あっと言う間に3曲が終わった


そして踊り終えたトカゲは突然むくむくと脹らみ始め
人間の男の子になってしまった

「ありがとう 君のおかげで戻れたよ」


人間の男の子になった元トカゲは嬉しそうにそう言うと
朝の街へそそくさと帰っていった


私はまだトカゲのままだったので
早くワルツの相手を探しにいくべきだったけれど

それほど人に戻りたいと思っていないことに気づいて
トカゲのままで今もいる



未詩・独白 ワルツ Copyright 松本 涼 2005-10-09 10:00:11
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