いろ てまねく いろ
木立 悟
街のすみの
白い白い花を
夜へと向かう暗がりのなか
したたる滴を追うように見つめる
からだが少しずつ咲いてゆく夜
時間と穴と痛みたちの夜
すべての窓と見つめあいながら歩く
耳もとの風が応えすぎる夜
碧の蛾がひとり
硝子の上をまわる
空と雲を引き離す手をすりぬけ
鉄の光は直ぐに昇る
雨を廻す手
蒼い蒼い手
音はあとからあとからついてくる
赦されぬもののようについてくる
羽のための羽も
腕のないもののための羽も
ひとしく ひとしくなく香り
涙のなかの夜に触れる
小さな色はまだ眠らずに
渦の行方を言い当てて
並び 入れ替わるふたつの季節の
遠去かる光を浴びつづけている